マネー・ドール -人生の午後-
 二本目のビールが空いた頃、真純はソファで、うとうとし始めた。
「ベッドで寝ないと」
「うん……」
ほら、ビールなんて飲めないくせに。無理するから。
 真純を抱えて、ベッドに寝かせると、そのまま眠ってしまった。
俺は子供のように眠る、少し赤くなった、その体を抱きしめた。

 かわいい……ほんとに、真純はかわいい。真純は本当に、四十なんだろうか。
 時々、真純が幼い少女に見える時がある。
 頬に軽く唇を当てると、真純はうん……、と言って、寝返りをうった。
「離さない」
 俺は呟いて、真純の背中を抱きしめた。

 絶対に、離さない。他の男に真純を渡すくらいなら、この手で……

 お前を殺して、俺も死ぬよ。
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