心も体も、寒いなら抱いてやる
第1章 再会
「ああ、疲れた。ちょっとコーヒーでも飲んで休憩しよう」

花蓮(かれん)がキッチンに立つ。

みのりと花蓮は大学の春休み中だが、教授から紹介された講演会のテープを起こし、それをテキストとしてまとめるというアルバイトを2人で引き受けたおかげでそこそこ忙しい。

1回の講演会は2~3時間で、それが60本。テープ起こしは聞きづらい個所を何度も戻して聞きながらタイプしていくので、録音時間の倍くらいは時間がかかってしまう。

中には滑舌が悪くて何度レコーダーを戻して聞きなおしても、何をいっているのかさっぱりわからない場合もあって、一人で作業をしていると煮詰まってくる。

それだと効率も悪いということで、ノートブック持参で花蓮の家に行き、一緒に作業を行っているのだ。

不思議なことに花蓮に聞き取れない音がみのりにはわかったり、逆にみのりが何度聞いてもわからない言葉が花蓮にはあっさり理解できたりする。

「やっぱり何でも協力しった方がうまくいくよねえ」と、みのりは独りごちる。
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