琥珀の記憶 雨の痛み
1学期の成績が、がくんと下がった。

バイトを始めたからと言って、部活してた頃と比べて格段に時間が減ったわけでもない。

むしろ富岡の女子バスケ部は平日は毎日朝練と夕練、土日ももれなく練習か試合があってハードだった。
時間的拘束はもちろんだけど、身体も疲れる。

部活を辞めてバイトを始めてからの方が、やろうと思えば勉強のしやすい環境だったはずなのに。


それでも成績が下がった理由は明らかだった。
私自身の、やる気の問題だ。


小中、高1の頃までは、成績を落としてはいけないというどこか強迫観念じみたものも確かにあったけれど。

だからと言って、反動と言うか両極端と言うか、さすがに行き過ぎだった。
下がっても『仕方ない』ではなく、それで『良い』とすら思っていたのだから。


成績表に並んだ見慣れない数字を見て漸く、そのことに気付いた。


学校の成績なんて……、という話をした時にユウくんが怒った訳も、その時になって漸く理解した気がする。
いや、それは本人に確かめたわけじゃないから、正確に言えば分からないままだけれど。


意外なことに、情けない数字の陳列を見ても母は怒らなかった。
ノーコメント。
それがまた、狙ったのかどうかは知らないけど、効果的だった。


もの凄く恥ずかしくなって、結果今、私は自らの意思で補講を受けている。


夏休みだけど一応普段と同じ時間にチャイムが鳴って、授業は終わる。

次の教科を受けたい人は残るし、受けない人は帰っていく。
教室には残っても、授業には耳栓をして、自習室代わりにする人もいる。

順番に持ちコマを見に来る先生たちも特に出欠を取るでもなく、生徒たちの自主性に任せていた。
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