臆病者の鬼遊び
それは、反射的な行動だった。
本能であった。
彼女の中の木崎の血が、そうさせた。
掌から熱が伝わってくる。
不穏な熱だった。
しかし、止めない。
七海子は倫太郎が抵抗しても、無理矢理もう片方の角にも手を出した。
一瞬、倫太郎は断末魔の如き凄まじい表情を浮かべた。
倫太郎の顔とは思えないくらいに、それはそれは醜い顔だった。
七海子は、ぎゅっと目を瞑った。
これは、倫太郎じゃない。
彼であって、彼でない。
彼の中の鬼が暴れているんだと、怯える自分を必死に押さえ付けた。