LOZELO
「もうっ、最近莉乃がお母さんみたい」
「えぇ?私まだ17歳ですけど」
「なんていうの?包容力?」
「当たり前じゃん!一年もツンデレ紗菜ちゃんを見てきた私が、最近のデレデレ紗菜ちゃんを見て嬉しくないわけないじゃん?」
「私、デレデレ?」
「うん、とっても母性をくすぐられる。守ってあげたくなるわ、女のくせに」
私に言っているような言葉にはさらさら聞こえないと思いつつ、感謝の気持ちを述べたらいいのか抗議すべきなのかわからなくて、曖昧な反応を返した。
「ほんとだよ?いつも気が気じゃなかったんだからね。あの堅物ドクターとか」
「堅物ドクター?江口先生?」
「そう!あの人!」
すぐさま江口先生を連想してしまったことに、内心罪悪感が否めないけれど。
心の中で一応謝ったから許してちょーだい。
「すごい紗菜のこと心配してたでしょ?だから気があるんじゃないかと思ってひやひやしてるのいつも」
「だって、医者なんだから患者の心配するのは当たり前でしょ」
「違う違う!紗菜は特別待遇だったよ!」
「私と話してる江口先生しか見たことないからでしょ」
被害妄想めいた莉乃の訴えは、はいはい、とスルーするとして。
手渡された黒板の写しを机に広げた。
目標ができると、勉強が楽しくて仕方なくなる。
まぁ、莉乃がいるから今は目を通すだけだけど。
「莉乃、わかってメモしてる?」
「ううん、よくわかんないけど紗菜が見たいだろうと思って書かれてることは残さず書いてるつもり。どう?偉いでしょ。万年睡眠学習だった私が、ノート取ってるって」
「偉い偉い」
「感情がこもってないんだけどー」