LOZELO
「新しいおねえちゃん?」
かわいい声が私を呼んでいるとわかったのは、目が合ったから。
廊下ですれ違った小さな女の子は、くりくりの瞳で私を見上げている。
くまさんがいっぱいついたパジャマがかわいい。
「ゆうなの隣の、新しいおねぇちゃんだよね?」
ゆうなちゃん。
聞き覚えのある名前は、熱が下がって、朝よりもご飯を食べれたよと自慢していた隣のベッドの女の子だ。
「おねぇちゃんも神崎先生のおともだち?」
おともだちって。
かわいい表現に、思わず微笑んでしまった。
彼女の世界が純粋すぎて、かわいくて。
視線を合わせてしゃがむと、彼女もにこりと笑った。
「そうだよ、今日からよろしくね」
「うん!お名前は?」
「さな、って呼んで」
「さ、な…」
一言ずつ確かめるように言って、また瞳がきらりと光る。
「さなちゃんって呼んでいい?」
いいよと頷くと、やったぁ!と両手をあげて喜んでいる。
屈託のない笑顔が、私まで笑顔にする。
こんなに表情筋を使ったのは、久しぶりすぎる。
「わからないことがあったら優奈が教えてあげるね!」
得意気に微笑む、かわいい女の子。
この出会いが私を変えてしまうなんて、このときは微塵も思いもしなかった。