LOZELO



初めて踏み入れた病院の検査室は、ひげ男の病院のそことは比べ物にならないくらい広くてびっくりした。


「緊張してる?紗菜ちゃん」


言ったのは、検査室にいた神崎先生だ。

検査用の服を白衣の上から着ながら、私に話しかける。


「してないです、別に」

「強がっちゃってー」


入院2日目あたりから急に馴れ馴れしくなったおじさんは、今日も朝の回診の時から鬱陶しかった。


「俺の手にかかれば、楽にしてたらすぐに終わっちゃうから安心してよ」


にんまり微笑んで、大きな機械がある部屋へと消えていった。

その笑顔を、言葉を、信じるか信じないかは私次第。

検査着に着替えをして間もなく、さっき神崎先生が入っていった検査室に呼ばれ、台の上に横になった。

機械の数も、何だかわからない線の多さも、私の緊張を煽る材料にしかならない。


指先に洗濯バサミみたいな機械をつけられ、腕には血圧計。

しばらくそのまま待たされて、神崎先生がやってきて。


「眠ってれば痛みもなく終わってるから」


ふざけた感じじゃなく言われて、逆に調子が狂いそうだった。


「麻酔の薬、いれますね」


看護師さんのその言葉で、点滴の途中から薬を入れられる。

その瞬間から、まぶたが重くなって、次第に意識は遠のく。

ふわり、雲の上にいるような。

これが、この世からのさよならの感覚なら幸せなのに、なんて思いながら。
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