あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
愚問だな。

そうして他人事のように遠巻きで傍観していた者達も巻き込んで。その瞬間(とき)は予期せぬ形で現れた。すべてを飲み込んで、凍らせて。

暴れる彼女とそれを止めようとする父親の反発し合う凄まじい力が棺にぶつかり、崩れ、落ち、


「ヒィ!」


遠い他人の短い悲鳴と共に、怨みを孕んだ重い(おも)い音が響いた。

本来なら故人を悼む為に設けられているはずの窓から覗いた綾の顔。そこには白い布がぐるりと巻いてあり、意図的に隠されたことで余計に不気味さと恐ろしさが増す。


何故、隠す。
何故、隠さなければならない。


その答えは直ぐに想像出来てしまったけれど。


「……綾ぁぁ…あぁやぁぁあああ!!!」


重力に逆らう事なく落下する大粒の涙は畳をしとどに濡らし、彼女の涙に比例して、俺の心のなかにも染みが作られていった。

ぽつり、ぽつりと、黒い雨が降る。

居た堪れなかった。何処かへ消えてしまいたくなった。

きっと、聖も幸次も。
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