あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
≪10≫ サヨナラ


目に焼き付く、絵空事。

村の人間でさえ近付かない、放り投げられた森の奥の奥。そこは日中でも光は殆ど入らない。だからこそ〝選んだ〟のだけれど。

そんな、薄暗い陰惨とした場所に探し人は居た。


「………千秋?…バカだなあ」


視線だけをこちらへ向け、眉を下げて困ったように微笑(わら)う聖。


「ここ、すごいだろ。俺もあの日以来はじめて来たから驚いた」


震える声で地面を睨みつけると、もう聖の顔は見えなくなってしまって、一気に不安になる。声だけじゃなにも理解(わか)らない。


「よりにもよってダリア、か」


雨上がりの森に、幾つかの温かな筋が差し込む。

その太陽からの恵みに照らされた薄桃色の大輪の花が、透明な雫を纏って美しく揺れた。まるで、美菜が揺らしたかのように。
< 68 / 173 >

この作品をシェア

pagetop