あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
遠くで聞こえる祭囃子が夏の夜を彩る。

誰かの笑い声や、酔った大人達の大きな声。ざわざわ、ざわざわと、騒がしい空気。そんな祭りの本会場から少し離れた場所で固まって談笑をしていると、不意に肩を叩かれた。


「千秋くんらあはもう帰りぃ」
「え?」
「ここから先は大人になってから来んさいね」


暗闇で顔はよく見えない。けれど、言いたいことは理解出来た。


「はい、もう少しだけ皆と話をしたら帰ります」
「まーす!」
「おんおん、良え子らや」


良い子の仮面も慣れたもの。

とびきりの笑顔と態度で返事をし、平気で大人を欺く。満足そうな後ろ姿がその証明。素直に騙されてくれる大人は嫌いじゃない。


「千秋の猫被り怖っ!」
「いや、マジで!」
「は?なにが?」


邪魔者が居なくなり、素に戻った途端にこれだ。


(猫被り、ね…)
 
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