ネトに続く現の旅
現が旅立って行く日は、本当にあっという間という言葉がびったりくるような速さで訪れた。
私は、現に言い放ったように見送りには行かず、自分の家の庭先で青い空を見上げながら、頭の上を何機も通り過ぎていく飛行機に、現の姿を重ねていた。
高い空にどこまでも続く鰯雲が、嫌でも秋を思わせて悲しかった。
大好きな夏が、現のことまでも一緒に包んで連れて行ってしまったようだった。

現、現、現。

この一年で何度この名前を呼んだのだろう。

いつだったか、現は私の纏うものを明るいと言ってくれたけれど、いつだって光り輝いていたのは現の方だった。
そこに向かって進めば、決して道を反れることのない、希望のようなものだった。
現と過ごした時があまりにも楽しくてあっという間だったので、その分だけがすっぽりと、夢の中の出来事のように思えた。



ねぇ、現も地雷を踏んで死んじゃったりするの?流れ弾に当たって死んじゃったりするの?
そして私は、毎晩ニュースを見ながら、日本人の死体があがらないことを確認してほっとしたりするんだろうか。

昔そんな歌があったっけ。
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