きらきら輝かせて恋色に

…と思って来たけど、

やばい、なんか本格的だ!

照明とか衣装とか、すごくよく出来てて
美人な役者さんがそこら中にいる。

うわぁテレビみたい!

…テレビなんて見たことないけど泣。
そのくらいビンボーなんだよ、私の家…

「…さん…吉岡さん!」
「っあ、はいッ!」

びっくりした…!

「話聞いてました?」
「…ごめんなさい。もう一回お願いできますか…?」

やば、聞いてなかった。

スタッフのお兄さんがエキストラの説明してくれてたけど、周りがぴかぴかしてて全然集中できないんだもん!

「だから、吉岡さんにはシーン15の
主人公とヒロインがぶつかるところで
『だいじょぶですかぁっ』って
言ってもらいたいんですよ」

「だ、大丈夫ですかって…?」

「違う違う。『だいじょぶですかぁっ』」

え? 違いわからないんですけど…

「ヒロインの友人ということで、
お願いしますね!」
「えっ、あ、ちょっ。まって…」

お兄さん行っちゃった…。

たった一言のセリフに、私は何だか
プレッシャーを感じた。

うまくできるかなぁ…

《間もなく、開演致します。
お席を離れているお客様は、
どうぞお戻りください……》

あ、もうすぐ始まる…。
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