不思議の国の女王様
 
「決してわらわの傍を離れるでない。これは命令だ。よいな」



 バラの蔓のように自分を縛り付ける、契り。


 甘い甘い、トゲの束縛。



「……はい、ずっとお傍におります、シェリル様」



 満足げに離れる指を追いかけて、捕まえて。



「ふ……くすぐったい。つくづくお前は、思わぬところで子供だな。ジャック」



 親愛のキスが、子ネコのたわむれのように思われても、


 微笑み返すほどに、満たされている。



「では、朝餉にしようぞ。今日もまた始めようではないか。廻るハートの女王の1日を」



 真紅のドレスを翻し、女王は颯爽と歩き出す。


 誠実なる忠臣を、その背に従えて。
 
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