好きを百万回。


「お昼の教室しかないって言ってるのに、強引にお昼は無理です、夜のお教室を作ってくださいってねじこむんやもんねぇ」

クスクス先生が笑う。

「すいません。でもどうしても習いたかったので。結局個人レッスンになってしまいましたね」

その点は申し訳なく思っていた。

「いいわよ。すごく熱心で間違いなくわたしの一番弟子になってくれたし」

作品を仕上げるのは楽しかった。キルトがあったから、辛いことも乗り越えられた。

「こまりちゃん・・・・・」

先生が言いにくそうに言葉を濁す。その先に出てくる言葉は簡単にわたしには想像がついた。

「朔也さん、帰国しはるんですね」

「こまりちゃん・・・・・」

「銀行でも噂になってましたよ」
出来るだけ、心の中を悟られないように笑って平気な声を出す。
< 2 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop