覚醒者3号
実を言うと、1号…あの女が小山田君にした話は、ほぼ真実だ。

確かに私は機関の人間で、小山田君に人体実験をした。

そして小山田君は覚醒者3号となるだろう。

それは私が既に『見て』いる。

だけど、あの女が言った相違点。

「小山田君、貴方を回収しに来た機関の回し者は、私ではなくさっきの女…覚醒者1号よ」

「…覚醒者…1号…?」

呟く小山田君に、私は頷いて見せた。

『機関』が人体実験の末、初めて実用化に成功した最初の超能力者。

それがさっきの女、覚醒者1号。

彼女は最初の成功例という事もあって、様々な実験を施されている。

機関が開発した様々な薬品を投与され、その結果常人を遥かに超える身体能力を持ち、その代償として様々なものを失った。

例えば感情の起伏、理性、そして善悪の判断力…。

1号は戦闘に特化した超能力を有する代わりに、機関の命令を遂行するだけの操り人形と化した。

「私はそれを止めにきたの…私の二の舞にならないように」

「……?」

訝しげな表情をする小山田君に。

「私も高校生の頃、貴方と同じように人体実験を受けて1号にさらわれたの…機関によってね…」



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