薬指の秘密はふたりきりで

亮介は、玄関脇にある二畳程のキッチンをちらっと見たあと、靴を脱ぎ始めた。


「ただいま。あ、ちょっと待って。先に、充電してもいい?」


変わらない優しい笑顔と低めの声。

私の返事を待つように、じっと見つめてくる。


「充電?」


一瞬何のことかわからなくて、首をかしげてると「残りパワーが少ないんだ」と言う。


あ、そっか。

スマホの電池が少ないんだ。

私ったら、物わかりが悪い。


「いいよ。亮介のって、私のと同じ機種だったよね。こっちに充電器あるから、使―――っ」


亮介の腕が目の前を掠めたのが一瞬見えて、あ、と声を出す間もなく、後ろからすっぽりと抱きすくめられていた。


「じゃあ、遠慮なく、充電させてもらうよ」

「・・・え?・・・や、ん、りょうすけ・・・ん」


耳から首の付け根まで、ゆっくりと唇が這っていく。

ぞくぞくするような感覚に身を委ねてると、耳朶をなめられながら囁かれた。


「こっち向いて、顔を見せて」


くるんとひっくり返されて、見上げると、そのまま顎が固定された。


「目が腫れてる。今日、泣いた?」

「あ、玉ねぎがしみたの。それで」

「そう。悪いけど、先に、食べるよ?」

「え?じゃ、用意しなくちゃ―――」


腕の中からすり抜けようとすると、腰がぐっと引かれて、後ろ髪に指が差し入れられて、艶を含んだ瞳が近付いてきた。

反射的に目を閉じると優しく唇が合わせられ、そのまま唇を割って舌が侵入してきて、口中を弄り始める。


「ん・・・ふ・・ん」


口づけは徐々に深くなっていき、頭がぼーっとして何も考えられなくなる。

ふにゃふにゃに蕩けてしまって、亮介に必死にしがみついてると、気付けば、ベッドの上に転がされて身ぐるみ剥がされていた。

そのまま亮介の腕の中で何度も意識を奪われて、結局、ハンバーグを焼いて食べたのは夜の10時くらいになった。

ショートカット美人のことは、結局何も聞けないまま、その日が終わっていた。
< 14 / 52 >

この作品をシェア

pagetop