薬指の秘密はふたりきりで

艶々になった薬指を見つめてると、ベッドの上に置いてあるスマホが、着信を告げた。


「亮介からだ!」


ちょっぴり沈んでいた心が急上昇する。

ベッドの上に飛び乗って、いそいそと画面を開く。

こんなとき正座をしてしまう私は、餌を待っておすわりしているワンコみたいだと、自分でも思う。

もしも尻尾があったなら、千切れんばかりに振ってることだろう。


『パーティは行くから』


「え、私、まだ何も聞いてないのに・・・」


それなのに、自分からこんな風に言ってくるなんて、これは、かなり忙しい証拠だ。

言葉は人に向けてるけれど、実は自分に言い聞かせてるっていうか―――


“有言実行”


亮介はそんなところがある。

そこが、上司の覚えがいい原因でもあるのだけれど――――


冴美は幼い頃からの友達で、大学進学と同時にこっちに出てきた、唯一の同郷の子だ。

仕事が大変だったり対人関係で悩んだりした時、お互いに励まし合って頑張ってきた。

結婚が決まったとき“良かったら彼にも来てほしいな”って、面識のない亮介も招待してくれたのだ。

先日、今の仕事の状態を話したら、立食形式だから1人くらいの増減は気にしなくていい、返事はギリギリでいいからと言ってくれた。


亮介には、無理してほしくない。

けれど、出来れば、一緒に行って欲しいとも思う。

だから、パーティに行こうって努力してくれてる彼の気持ちが、とても嬉しくて有り難いのだ。

だから、lineには『うん、ありがとう』とだけ返した。

もしもの場合は、私一人だけで出席することを心に決めて。
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