薬指の秘密はふたりきりで
料理も控えてるから、亮介が泊まりに来てくれても、出来合いのものしか出せない。
『構わないよ』
そう言ってくれるけれど、心苦しくなる。
いつだって、彼には、私の手料理を食べて欲しいもの。
だからもう、今回の撮影を最後にしたいと思うけれど――――
ハンドケアを終えた私の手。
肌は白く輝いて、黒子もシワもなくて自分でも綺麗だと思う。
その中でも、一番主張してくる左手の薬指をじっと見つめる。
今回の撮影は、相手役の男性モデルがいると聞いた。
パンフレットには臨場感のあるシーンを入れたいと、私の手を取って、薬指に指輪をはめるところを撮るらしい。
『完全には嵌めないから、大丈夫です』
打ち合わせではそう言っていたけれど、複雑な気持ちになる。
『今回はね、相手役の人がいるんだって』亮介に撮影日などの詳細をlineしたら、『そう。わかった』って短い相づちが返ってきただけだった。
それきり何も言ってこなくて、その日はそのまま終わった。
亮介はヤキモチをやかない。
もしも逆の立場だったら、私は、相手の子に嫉妬してしまうのに。
例えフリだとしても、私以外の子に指輪をはめようとするなんて、考えただけでも哀しくなるのに。
やっぱり、私の方が一方的に好きなのかな・・・。
亮介は、私のこと――――
『ねえ知ってる?長谷川さんのこと』
『カフェでロングヘアーの綺麗な人といて、冊子を見ながら楽しそうに話してるの、営業の人が見たんだって』
『残業中にかかってきた電話に出たとき、優しく笑ってたって』
『あれ、相手は、絶対彼女だよ』