赤黒いバラ
カーテンを明けると綺麗な月が出ていた。

「中学の英語の授業にて、夏目漱石は『I love you.を訳してみなさい。』と言った。すると生徒は『我汝を愛す』と訳した。夏目漱石は『日本人はそんな直接的に伝えない。月がきれいですね。とでも訳しておきなさい。と言った。」

有名な話。

月には不思議な力があるような気がする。

竹取物語だって、最終的にはかぐや姫が月に帰る。

太陽でもない。天の国でもない。

月であるからこそ意味がある。

夏目漱石だって、月に着目している。

星に願うより月に願う方が効果がある気がする。

「いつか、月がきれいですね。と言えるような人になれますように。」

私はそう願ってカーテンを閉めた。
< 108 / 242 >

この作品をシェア

pagetop