君のいいところ、1つしか思いつかない。





しばらく走って、息を整える。

緊張が一気に切れて、しばらくその場で立ち止まっていた。


「晴、大丈夫かな…?」

「…あたし、ちょっと見てくる」

「あ、あたしも行く!」






はーちゃんと今走って来た道を戻ろうとすると、カラオケの方から走ってくる結城くんが見えた。




「あっ!」




急いで駆け寄ると、真っ赤に腫れ上がった結城くんの頬に息を呑む。




「2人とも大丈夫か?!」




初めて見るような焦った顔で聞くけど、そんなことよりも。




「晴、それ…!」




痛々しいその腫れは、見ているこっちも痛くなってくるくらいで。








「あー、ちょっと一発くらった」



はは、と決まり悪そうに笑う結城くん。




何で、そんな事までして助けてくれるの?


喧嘩なんか全然出来そうにないのに。

痛いくせに笑って。

いつだって、困ったら笑って。





じわっと目の奥が熱くなる。


何で、何で…。


何であたしは、泣いてるんだろう。








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