落ちる恋あれば拾う恋だってある
営業推進部のフロアにも鉢を置きたいって、あの部署には観葉鉢は必要ないと思う。部長にも言って、話が上がってきても却下してもらおう。でもそうしたら宇佐見さんの反感を買うかな?
何で私、うまくいかないのかな……。
横山さんと会社帰りに私の家の近くのレストランで食事をした。有名なお店らしいけど今まで全然知らなかった。横山さんは美味しいお店をたくさん知っている。
今日は私の方が退社するのが遅く、会社の近くのカフェで待ち合わせた。会社の人たちに二人でいるところを見られたら何て言われるだろう。
社内で私たちがどう見られているのか横山さんは気にしてる? 同じ部署には宇佐見さんもいるのに……。
そんな話題は一度もしたことがない。聞くことが怖かった。
横山さんとの間に気まずい空気を作ってしまったら、私はどう対処したらいいのか分からない。それに元カノのことを聞いて重たいとか面倒な女だと思われたくない。
「北川さん」
「はい」
「明日の夜は北川さんの手料理が食べたいな」
「手料理ですか?」
「うん。僕の家で作って」
「え?」
横山さんの家で?
「何でもいいんだ。簡単なやつで。北川さんの作ったご飯が食べたい」
「……分かりました。作ります」
夜に横山さんの家に行く。
別に深い意味はない。ご飯を作りに行くだけなんだから。
「あの、ここで大丈夫です」
横山さんに家の近くまで送ってもらった。
「じゃあ明日楽しみにしてる」
「はい」
見つめ合って、横山さんの顔が近づいてきたから私はゆっくり目を閉じた。
唇が触れ合う時間が長くなった。顔の角度を変えるキスに変化した。ドキドキするのは変わらない。
私の頭の中は横山さんで溢れている。