どうぞ、ここで恋に落ちて

すずか先生の前であんなふうに照れてた樋泉さんも、彼女が明らかに樋泉さんを好きでとってもお似合いなふたりだったのに、恋人同士ではないことも。

私は今こそ樋泉さんの役に立とうと、彼に向かって明るく笑ってみせた。


「樋泉さんのことを本当に好きな人は、樋泉さんがちょっと恋愛に不器用だからって、嫌いになったりしませんよ。私は、メガネをしてるかっこいい樋泉さんも好きですけど、そうじゃない樋泉さんを知れて、もっと好きになりました」


だから、すずか先生が樋泉さんのことを本気で好きならきっと大丈夫。

チクチクと胸を刺すほんの少しの嫉妬と切なさを押し殺して、ただ彼が好きな人と幸せになれるようにと精一杯思いを込める。

私じゃ樋泉さんと釣り合わないことはわかってるから、メガネの秘密を打ち明けてくれた彼にとって、せめて"良い人"でありたいの。


ふと気が付いてみると、目の前の樋泉さんは両耳どころか頬まで赤く染めていて、私はようやく自分のした大胆な発言にハッとした。


ま、真っ赤になってる樋泉さん、めちゃくちゃかわいい……じゃなくて!

私に言わせれば樋泉さんはそのままでも十分過ぎるくらい素敵なんだって伝えるのに必死すぎてよく考えてなかったけど、これじゃあ思いっきり告白だよ。

樋泉さんの背中を押そうって思ってるのに、私が告白してどうすんのよ!


「あっ、いや、違っ、好きっていうのは、その、そういう意味じゃない……ってわけでもないんですけど、えっと……」
< 90 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop