蟲狩り少女
あたしは体調が悪いからと布団から出てこなかったお母さんの姿を思い出した。


あの時、すでにお母さんの体に蟲が覆い尽くしていたのかもしれない。


お母さんは、それをあたしに悟られまいとして隠していたのかもしれない。


色々な考えが頭の中を巡って行く。


すぐに助けなきゃいけない。


その気持ちとは裏腹に蟲たちは次々に溢れ出して来る。


「くそっ! これじゃらちが明かない。里音、笛を!」


「わかった!」


あたしは片手でスプレーを噴射させながら笛を吹いた。


聞こえない音色。


それはあたしたちを守ってくれるはずだ。


スプレーの届かない場所にいる蟲たちが次々に苦しみ始める。


「里音。とにかく玄関のドアにスプレーをあてるんだ。中に入ってお母さんを助け出さないと」


光磨の言葉にあたしはうなづく。

2人のスプレーは玄関のドアへと集中した。
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