光の少女Ⅰ【覚醒編】
第1部 風の国

第1章 異世界

1



「ただいまー」


陽が落ち、薄暗くなりつつある中、一人の少女が家へと帰ってくる。

鍵の掛かっていた家の中は、人気はなく、明かりもない。


「そうだ。お父さんもお母さんも仕事だったっけ」


少女、桐生花音は溜息をついた。

幼い頃から一人で留守番することはあり、帰ってきた時に誰も居ないのに慣れてはいたが、寂しいという気持ちもある。



溜め息をついて、廊下の電気を付け、階段を上がって自分の部屋へ向かう。

その途中で両親の部屋のドアが開いていて、中で何かが光っているのが見えた。


「何だろ?」


光っているものが気になって、両親の部屋へ入る。

光を放っていたのは、シンプルなペンダントだった。


「こんなの、お母さん持ってたっけ?」


どうにも気になってしまい、ペンダントを手に取ってよく見てみたが、やはり母親が付けているのをみたことはない。


「まぁ、何処にも付けていってないし、家に保管してあるってことは、それだけ大切なものなんだよね」


そう呟き、納得したように頷くと、ペンダントを戻そうとする。

しかし、その前にペンダントの光が強まり、花音を包み込む。


「えっ?きゃあああ!」


その直後、花音の足場がなくなり、何かの空間に投げ出されたように感じた。

一瞬後、光がおさまった時には花音の姿は消え、鞄だけが残されていた。
< 1 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop