光の少女Ⅰ【覚醒編】


「いいだろう。花音、城の中に部屋を用意するから、今日は休みなさい」

「は、はい」

「風夜、案内しなさい。空夜、お前は他国に連絡するように」


王はそう言って、謁見の間を出ていく。それを見て、花音は息をはいた。

緊張が解けて、疲れが押し寄せてくる。その時、前に誰かが立った。


「おい」

「は、はい」


不機嫌そうな声音に、花音は思わず背筋を伸ばす。

声を掛けてきたのは、先程まで王の隣にいた空夜と呼ばれた青年だった。


「お前が光の一族でないなら、邪魔なだけだ。さっさと元の世界へ帰れ」

「兄上!」


空夜の言葉に風夜が声を上げる。花音は風夜が何かを続けようとするのを止めるように首を振ってから、空夜に頭を下げた。

それを見た風夜は溜め息をつき、空夜は花音を冷たく一瞥して立ち去っていく。


(私だって、来たくて来たわけじゃないのに・・・)


顔を俯かせていると、今度は誰かに服の袖を引っ張られる。

視線を動かすとニコニコと笑みを浮かべている幼い少女の姿があった。



「ねえねえ、お姉ちゃん」

「えっ?」

「お姉ちゃんがいた世界ってどんなところ?やっぱり、この世界とは違うの?」


誰かわからない少女に急に聞かれ、困ったように風夜を見る。すると、彼は軽く少女の頭を叩いた。


「こら、まずは自己紹介だろ!」

「あ、そうだった!ごめんなさい!私はこの国の皇女、風華です。宜しくお願いします」

「こちらこそ宜しくね」


笑顔を向けてくる風華に、花音も笑みを返す。


「風華、今から花音を部屋に案内するから、話は行ってからにしたらどうだ」

「はーい」


二人の様子を見ていた風夜が言った言葉に、風華が元気よく返事をする。

そして花音は、二人の案内で部屋へと向かった。
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