シンデレラに恋のカクテル・マジック

 シリアルとサラダで軽く朝食をとった後、菜々は永輝のSUVでJR新大阪駅まで送ってもらった。駅に近いコインパーキングに駐車した永輝が、車から降りてスーツのジャケットを羽織る。

「珍しいですね、永輝さんのスーツ姿」

 菜々の言葉を聞いて、永輝がニヤッと笑って言う。

「似合うだろ?」
「はい。でも、見送るだけなのにわざわざ……」
「張り合ってるんだ」

 永輝がそれだけ言って、菜々を促し歩き出した。

「張り合ってるって、誰と何をですか?」
「恥ずかしいから言わない」

 わかるようなわからないような気持ちで菜々が永輝とともに駅の改札口に着いたとき、通路の時計は五時四十分を示していた。

「あいつはまだ来てないのか?」

 永輝が辺りを見回したとき、みどりの窓口の自動ドアが開いて一臣が出てきた。今日は昨日より一段明るいチャコールグレーのスーツを着ていて、朝からパリッとした印象だ。

「おはようございます、菜々さん」

 永輝など眼中にない、とでもいうように、一臣が菜々に笑いかけながら近づいてくる。

「あ、おはようございます」
「おはよう、和倉さん」

 菜々に続いて永輝が言って、一歩足を踏み出し腕を組んで一臣を見た。一臣は今気づいたといわんばかりに永輝を見やる。
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