シンデレラに恋のカクテル・マジック
「じゃあ……もしもですけど、私が和倉さんと結婚したら……最初は好きじゃなくても、穏やかに愛情を育めるでしょうか?」

 菜々に問われて、由香里が考えながら答える。

「どうかしら。嫌悪感がなければ大丈夫かも」
「嫌悪感?」
「精神的な嫌悪感もだけど、肉体的な嫌悪感もね」
「に……」

 叔母の大胆な言葉に、菜々は目を丸くした。

「私の場合、フランスへ行って料理に触れたことで自分の本心がわかったの。柳井に対する嫌悪感は、彼自身に対するものじゃなくて祖父の横暴さへの嫌悪感から来てるんだって」

 菜々が叔母の言葉をじっくり考えていると、由香里が言う。

「まあ、父のことだから、せっかく捜し出した孫娘にあれこれと世話を焼く……というより要求をするかもしれないわね。和倉さんでなくても、どこかの企業の御曹司や優秀な部下を見繕ってきては見合いしろ、とか」

 由香里の言葉に菜々は苦笑した。

「それは勘弁してほしいです」
「そうね。私もそれとなく父に注意してみるけれど、私の言葉にあの頑固者の父が耳を貸すとは思えないから、あまり期待しないでね。でも」
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