君のために歌う歌

この神社。

「おーいたいた。やっぱりここかよ。」




高橋は、うつむいて膝に突っ伏している宙子の隣に座った。




少し遠くで、花火が上がり、真っ暗な境内を一瞬明るく照らす。





宙子は、泣きながら、無意識のうちに近くの神社に来ていた。



気持ちが収まるのを待って、お賽銭箱の前に座って突っ伏していた。



 

「……ほれ、溶けるから早く食べろ。」



そう言って、高橋は宙子にかき氷を差し出した。


宙子は、ちらりとそれを見た。




レモン味の、練乳がけ。



宙子の好きな味である。




「変な目で見られながら買ったんだから、食え。」




高橋はさっきより、有無を言わせない口調で言った。



宙子は何も言わずに走り出してしまった罪悪感もあり、それを受け取って食べ始めた。


冷たさと、優しい甘さがすっと染み込む。


また、涙が出てきた。
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