いたずらヒーロー。
「ありがとう、……成瀬くん。」


 成瀬くんの泥で汚れた手から上靴を受け取ると、彼は照れくさそうに笑って、少し天然パーマの柔らかそうな自分の髪を撫でた。


「また困ったら、……いつでも言ってね。」


 そこで予鈴が鳴って、慌ててわたしは泥んこをはらって、上靴を履いた。


 少し湿って気持ち悪いけれど、みんなと違うことが怖かったわたしは、こっちのほうが数段マシだった。


「よかったね。」


 パタパタと走りながら教室に向かっていると、ゆうちゃんが言った。


「うん!1時間目、なんだっけ〜。」

「今日は確か、音楽だよ。」
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