小さな恋物語


「早く彼女作りなよ。料理上手な子、周りにいないの?」


会社に1人や2人いそうだけど。優吾は見た目だって悪くないし、男のわりには減らず口なところもあるけど。明るいし人当たりも良いし、モテなくはないと思うんだよね。


「うーん……まぁ、女同士で料理出来るアピールしてるようなのはいるけど。でもそれってホントに純粋に料理が好きなのか、そういう自分を武器にしようとしてるのか分からないじゃん。男は肉じゃがとか生姜焼きが好きみたいなさ、決めつけてるようなタイプも嫌いだし」


言っていることは分からなくはない。でも男女どちらでも料理が出来ないよりは出来た方が良いし、家事もある程度こなせた方が困らないのが事実。


「生きていく上で武器は大事だと思うけどね」

「侑美みたく食べることが好きだから料理が好きって方が、俺は共感出来るし嬉しいけどね」


優吾は雑巾を絞ると大声でヨシッ!と言って、テーブルの上に置いていた財布を取る。


「買い出し行こう」


食べることが好きだから料理が好き…か。それはそうなんだけど、優吾は全然気づかない。鈍感だ。
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