初恋の人は人魚×アイドル！？
再会と明かされる真実
再会
「ナギくん超可愛い⋯⋯」
テレビをみつめて至福のため息をもらす私の名は愛川莉音。
特にこれといった特徴もなく成績も見た目も中身もすべてにおいて普通な女の子。
そんななんの特徴もない私だけど、唯一胸を張って自慢出来ることがある。それはナギくんが大好きだってこと。
ナギくんっていうのは国民的アイドルグループSUNNY'Sのメンバーの一人で……。
ゆるくカールした薄茶色の髪の毛。女の子みたいな大きくてくりくりした茶色の瞳。透き通るような白い肌。まるで美少女のようなルックスを持っている。
それに加えて性格は心優しく思いやりがあって歌もこの上なくうまい。
ほんと、なにに関しても最高なアイドルであり男の子なのだ。なんて考えていたら……
「うわ……姉ちゃんきも……」
そんな声のする方にバッと視線をうつすと弟の風雅が嫌悪感に満ちた表情で突っ立っていた。
風雅はいわゆるアニメオタクというやつでよく美少女アニメをみて萌え萌えいっている。私からしたらそっちのほうがきもいのだが。
「風雅うるさい。あっちいって」
「さっきの姉ちゃんの顔」
そういって二ヤニヤ二へ二へする風雅。すごく気持ち悪い。
「……」
せっかくの気分が台無し。
ここにいても風雅へのイライラが募るだけだし、外に出て気分転換しよう。そう思い立つとスクっと立ち上がり玄関に向け歩き出す。
途中腹いせとばかりに風雅の足を思いっきり踏んづけてからリビングをでる。
「いってえええ！なにすんだよ、姉貴！！……くっそー……」
そんな悲鳴とうめき声を聞き内心満足しながら私は外に出た。
家をでて五分もたたずに海が見えてくる。
深い群青色の海にキラキラと反射する満月。穏やかな波の満ちひきする音。
そんな情景に心も落ち着いてきて、初恋というものをしたあの日の記憶が蘇る。
それは小学三年生の時のこと。
私は両親の仕事の都合でこの海辺の町に越してきた。
初めての引越し、新しい場所、目の前には海。とにかくワクワクしていた私は「部屋で大人しくしてなさい」という両親のいいつけをやぶり弟をひきつれ海に行った。
海につくと私は砂でお城を作って遊んだ。弟も私の近くで砂山を作ったり貝殻を拾ったりしていた。そうやって二人、楽しく遊んでたんだけど……。
気づくと弟がいなくなっていた。
それから私は声が枯れるくらい弟の名前を呼びながら砂浜を歩き回った。
けれど、弟はどこにも見当たらない。
弟を見つけることに必死で雨がふりはじめ、海が荒れてきたことにも全く気づかなかった。
風雅が本当にいなくなっていたらどうしよう、そればっかりだった。
これはあとから知った話だけど、この時風雅は家に帰っていた。「先に帰る」といっていたらしいけど、砂のお城をつくるのに夢中だった私は全く気づいていなかった。
「風雅……」
もう声も出ない。そんな時、私は大きな波に飲み込まれた。
目や鼻に入ってくる海水が痛くて、息ができなくなって、胸が苦しくて。もう死ぬんだ……って自分の命の終わりを子供ながらに察した。
そんな時、「大丈夫」そんな透き通るような声が響いてきた。もう死んじゃうんだ、って諦めていたけどその言葉にまだ大丈夫かもしれないと思い直せた。
誰かがそっと私の体を抱きかかえ海面に向かって泳いでいってくれてる。
そんな状況に朦朧としながらも感謝の念を覚え、私は意識を手放した。
♪ラ〜ラララ〜ララ〜ラララ〜♪
口ずさむそのメロディはとても綺麗で暖かい。
そっと瞳をあけると暗がりでも充分わかるくらい綺麗な顔立ちをした男の子がいた。この子が私を助けてくれたのだろう。「ありがとう」そう、感謝の念を伝えようとする。
しかし目が合った途端に男の子は慌てたように去っていく。
朧げに見えた彼の背中は思っていたよりずっと小さくて。そんな小さな背中で私を助けてくれたことがひどく愛おしく思えた。
やがて遠くの方からお父さんやお母さんの私の名前を呼ぶ声が聞こえてきて⋯⋯。
間もなくしてお父さん達が私のところにかけてきた。
すごく心配してくれたんだけど、私の頭の中はあの男の子のことばかりで……。
でも「こちらにかけてきた時男の子なんていなかったぞ」とお父さん達にはいわれ、その男の子は「幻の人」という位置づけになってしまった。
そんなことはないのに……。
なんてことを考えてたからか自然とあの男の子に出会った場所に来ていた。
「いるわけないよね〜……」
あれから何度もここにきた。
もしかしたら、あの男の子がいるかもしれないっていう希望がずっと胸の中でくすぶっていて。
けど、あの男の子はいない。
本当に幻覚だったのかな……なんて悲しい考えが生まれてきたからもう帰ろうとUターンする。すると、
「こんばんは」
「え……」
スタスタとこちらに向かって歩いてくる男の子。
嘘……。なんでここに？……。
「ナギ……くん？……」
目の前にやってきた男の子に恐る恐るそうたずねる。
ニコリと微笑んで
「そうだよ」
というのは私の大好きなアイドル、ナギくん。
「え……と……ええええ！！」
驚きで目を見開いた私だけどすぐにへたりこむ。ナギくんがこんな至近距離にいる。なにこれ夢なの？
「大丈夫？」
そういって手を差し出してくれるナギくん。
ゆ、夢ならせっかくだし触ってみたい。現実だとしたらなおさら……。
けど現実でこんなことありえないし！でも私いつ寝たっけ。と脳内パニックを起こしている私をみかねて、腕をつかみ優しく立ち上がらせてくれるナギくん。
「あのさ、こんなこといったら余計パニックになっちゃうかもしれないけど」
「は、はい……」
どうしよう。目合わせられない。
腕をつかんだナギくんの手はちゃんと暖かくて実感があって夢ではないようだった。だとしたらなんなのこの奇跡。
「小さい頃君、海に溺れたよね？」
その言葉にハッとして顔をあげる。
綺麗な茶色の瞳とばっちり目が合う。
「なんでそれを……」
ナギくんは優しい笑みを浮かべる。
「僕、溺れた君を助けたんだけど……。覚えてる？」
「え……ええええ！？」
あの綺麗な男の子がナギくん……。
二人の姿が重なっていく。確かにナギくんの歌声はあの子の歌声と似ているし見た目も朧げではあるが似ている気がする。
「ありがとう！！」
思いっきり頭をさげる私。
私は今、この人のおかげでここに立てている。その感謝をやっと伝えられた。
「僕はさ……」
先ほどとは違ってどこか冷たさのあるその声に頭をあげるとナギくんが切なげな表情で海を見つめていた。
「たくさんの人を傷つけてたくさんの人を悲しませて、ここに立ってる。」
なにがいいたいんだろう。
「ナギく」
今にも消えてしまいうそうに儚く見えるナギくん。そんな彼に伸ばした手はサッと振り払われる。
「僕は君に感謝されるために来たんじゃない。」
こわい。鋭い瞳でこちらをみるナギくんはテレビでみるナギくんからは想像もつかない。
「僕は君のことが嫌いだ。消えて欲しいとすら願ってるよ」
そういうとスタスタと去っていくナギくん。
気づくとへたりこんで声を上げて泣いていた。
大好きだった人にそんなことをいわれたから……かな……。
去っていく彼の背中はあの日よりずっと大きくて。でもとても哀しそうだった……。
テレビをみつめて至福のため息をもらす私の名は愛川莉音。
特にこれといった特徴もなく成績も見た目も中身もすべてにおいて普通な女の子。
そんななんの特徴もない私だけど、唯一胸を張って自慢出来ることがある。それはナギくんが大好きだってこと。
ナギくんっていうのは国民的アイドルグループSUNNY'Sのメンバーの一人で……。
ゆるくカールした薄茶色の髪の毛。女の子みたいな大きくてくりくりした茶色の瞳。透き通るような白い肌。まるで美少女のようなルックスを持っている。
それに加えて性格は心優しく思いやりがあって歌もこの上なくうまい。
ほんと、なにに関しても最高なアイドルであり男の子なのだ。なんて考えていたら……
「うわ……姉ちゃんきも……」
そんな声のする方にバッと視線をうつすと弟の風雅が嫌悪感に満ちた表情で突っ立っていた。
風雅はいわゆるアニメオタクというやつでよく美少女アニメをみて萌え萌えいっている。私からしたらそっちのほうがきもいのだが。
「風雅うるさい。あっちいって」
「さっきの姉ちゃんの顔」
そういって二ヤニヤ二へ二へする風雅。すごく気持ち悪い。
「……」
せっかくの気分が台無し。
ここにいても風雅へのイライラが募るだけだし、外に出て気分転換しよう。そう思い立つとスクっと立ち上がり玄関に向け歩き出す。
途中腹いせとばかりに風雅の足を思いっきり踏んづけてからリビングをでる。
「いってえええ！なにすんだよ、姉貴！！……くっそー……」
そんな悲鳴とうめき声を聞き内心満足しながら私は外に出た。
家をでて五分もたたずに海が見えてくる。
深い群青色の海にキラキラと反射する満月。穏やかな波の満ちひきする音。
そんな情景に心も落ち着いてきて、初恋というものをしたあの日の記憶が蘇る。
それは小学三年生の時のこと。
私は両親の仕事の都合でこの海辺の町に越してきた。
初めての引越し、新しい場所、目の前には海。とにかくワクワクしていた私は「部屋で大人しくしてなさい」という両親のいいつけをやぶり弟をひきつれ海に行った。
海につくと私は砂でお城を作って遊んだ。弟も私の近くで砂山を作ったり貝殻を拾ったりしていた。そうやって二人、楽しく遊んでたんだけど……。
気づくと弟がいなくなっていた。
それから私は声が枯れるくらい弟の名前を呼びながら砂浜を歩き回った。
けれど、弟はどこにも見当たらない。
弟を見つけることに必死で雨がふりはじめ、海が荒れてきたことにも全く気づかなかった。
風雅が本当にいなくなっていたらどうしよう、そればっかりだった。
これはあとから知った話だけど、この時風雅は家に帰っていた。「先に帰る」といっていたらしいけど、砂のお城をつくるのに夢中だった私は全く気づいていなかった。
「風雅……」
もう声も出ない。そんな時、私は大きな波に飲み込まれた。
目や鼻に入ってくる海水が痛くて、息ができなくなって、胸が苦しくて。もう死ぬんだ……って自分の命の終わりを子供ながらに察した。
そんな時、「大丈夫」そんな透き通るような声が響いてきた。もう死んじゃうんだ、って諦めていたけどその言葉にまだ大丈夫かもしれないと思い直せた。
誰かがそっと私の体を抱きかかえ海面に向かって泳いでいってくれてる。
そんな状況に朦朧としながらも感謝の念を覚え、私は意識を手放した。
♪ラ〜ラララ〜ララ〜ラララ〜♪
口ずさむそのメロディはとても綺麗で暖かい。
そっと瞳をあけると暗がりでも充分わかるくらい綺麗な顔立ちをした男の子がいた。この子が私を助けてくれたのだろう。「ありがとう」そう、感謝の念を伝えようとする。
しかし目が合った途端に男の子は慌てたように去っていく。
朧げに見えた彼の背中は思っていたよりずっと小さくて。そんな小さな背中で私を助けてくれたことがひどく愛おしく思えた。
やがて遠くの方からお父さんやお母さんの私の名前を呼ぶ声が聞こえてきて⋯⋯。
間もなくしてお父さん達が私のところにかけてきた。
すごく心配してくれたんだけど、私の頭の中はあの男の子のことばかりで……。
でも「こちらにかけてきた時男の子なんていなかったぞ」とお父さん達にはいわれ、その男の子は「幻の人」という位置づけになってしまった。
そんなことはないのに……。
なんてことを考えてたからか自然とあの男の子に出会った場所に来ていた。
「いるわけないよね〜……」
あれから何度もここにきた。
もしかしたら、あの男の子がいるかもしれないっていう希望がずっと胸の中でくすぶっていて。
けど、あの男の子はいない。
本当に幻覚だったのかな……なんて悲しい考えが生まれてきたからもう帰ろうとUターンする。すると、
「こんばんは」
「え……」
スタスタとこちらに向かって歩いてくる男の子。
嘘……。なんでここに？……。
「ナギ……くん？……」
目の前にやってきた男の子に恐る恐るそうたずねる。
ニコリと微笑んで
「そうだよ」
というのは私の大好きなアイドル、ナギくん。
「え……と……ええええ！！」
驚きで目を見開いた私だけどすぐにへたりこむ。ナギくんがこんな至近距離にいる。なにこれ夢なの？
「大丈夫？」
そういって手を差し出してくれるナギくん。
ゆ、夢ならせっかくだし触ってみたい。現実だとしたらなおさら……。
けど現実でこんなことありえないし！でも私いつ寝たっけ。と脳内パニックを起こしている私をみかねて、腕をつかみ優しく立ち上がらせてくれるナギくん。
「あのさ、こんなこといったら余計パニックになっちゃうかもしれないけど」
「は、はい……」
どうしよう。目合わせられない。
腕をつかんだナギくんの手はちゃんと暖かくて実感があって夢ではないようだった。だとしたらなんなのこの奇跡。
「小さい頃君、海に溺れたよね？」
その言葉にハッとして顔をあげる。
綺麗な茶色の瞳とばっちり目が合う。
「なんでそれを……」
ナギくんは優しい笑みを浮かべる。
「僕、溺れた君を助けたんだけど……。覚えてる？」
「え……ええええ！？」
あの綺麗な男の子がナギくん……。
二人の姿が重なっていく。確かにナギくんの歌声はあの子の歌声と似ているし見た目も朧げではあるが似ている気がする。
「ありがとう！！」
思いっきり頭をさげる私。
私は今、この人のおかげでここに立てている。その感謝をやっと伝えられた。
「僕はさ……」
先ほどとは違ってどこか冷たさのあるその声に頭をあげるとナギくんが切なげな表情で海を見つめていた。
「たくさんの人を傷つけてたくさんの人を悲しませて、ここに立ってる。」
なにがいいたいんだろう。
「ナギく」
今にも消えてしまいうそうに儚く見えるナギくん。そんな彼に伸ばした手はサッと振り払われる。
「僕は君に感謝されるために来たんじゃない。」
こわい。鋭い瞳でこちらをみるナギくんはテレビでみるナギくんからは想像もつかない。
「僕は君のことが嫌いだ。消えて欲しいとすら願ってるよ」
そういうとスタスタと去っていくナギくん。
気づくとへたりこんで声を上げて泣いていた。
大好きだった人にそんなことをいわれたから……かな……。
去っていく彼の背中はあの日よりずっと大きくて。でもとても哀しそうだった……。
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