溺愛オフィス


「気にします。困ります」


反論するも、桜庭さんはどこ吹く風といった様子。

それどころか、からかうように唇を歪ませて。


「蓮井は好きな奴でもいるのか?」


そんなことを聞いてきた。

途端、何故か目の前にいる桜庭を意識してしまう。


ち、違うでしょ。

桜庭さんは私の好みと全然違うんだから!


「いたとしても、桜庭さんには教えません」


強気に答えてみるも、密かに騒ぎ続ける心臓。

落ち着けようとスプモーニを飲めば、いまだからかうように桜庭さんは私を見ていて。


「お前の両親は心配だろうな。男が苦手なんて、嫁に行くのは確かに遅れそうだ」


いらない言葉を投げつけてきた。

確かに、とつけたのは、以前オフィスで私がした話を覚えていてくれてるからだろう。

覚えてくれているのは嬉しいことだけど。


「余計なお世話です」


< 110 / 323 >

この作品をシェア

pagetop