溺愛オフィス


それは、入社の動機について、だろうか?


と、車内、CDプレイヤーの差込口に設置されたスマホホルダーに収まっている桜庭さんのスマートフォンが着信を告げた。

思わず目が行ってしまったけど……


相手の名前は


【支倉 香織】


女性だった。


こんな時間だ。

もしかして彼女さんだろうかと思い、チラリと桜庭さんを見る。

桜庭さんは着信に気づいてないのか、前方だけを視界におさめていた。


「あの、電話鳴ってますよ」


彼女さんなら出なくていいのかと気になって、教えたつもりだったんだけど……


「いい。また明日にでも掛け直す」


どうやら、気づいてとらなかったらしく。

そんな会話をしているうちに、携帯は静かになった。


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