溺愛オフィス


「おはようございます」


ちょっと緊張しながら入ったオフィスは、いつもと変わらない朝の風景。

パソコンが立ち上がるの待ちながら、デスクで朝食をとる人。

さっそく仕事の電話をしている人。

コーヒーの香りを漂わせながら、自分のデスクに向かう人。

私は、その光景の中に桜庭さんの姿を探す。

どうやらまだ出社していないようで、変わりに私はデスクでネイルのチェックをしている美咲を見つけた。


「美咲」

「おはよー」


私は微笑みと共に挨拶をくれた美咲の腕を引いて立ち上がらせる。


「なになに」


マスカラたっぷりの長いまつげをパチパチする彼女に、私は少し付き合ってと言ってお手洗いへ移動した。

幸い、お手洗いには誰もいない。

私は声のボリュームを落として美咲に昨日のことを尋ねる。

すると、美咲は。


「ああ、あたしが呼んだの」


KAORIさんが帰ってすぐ、私をどうするか迷って桜庭さんに電話したと話した。


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