溺愛オフィス


「そうだったんだね……」


なんというか。

申し訳ないと思いつつも、美咲の言葉に口元がニヤケそうになる自分がいて。

そんな私の様子に気付いたのか、美咲は楽しげに一歩詰め寄る。


「で? で? 朝起きたら隣に桜庭さん?」

「い、いないからっ!」

「えー、なにソレ。やることやったら帰った感じ?」

「何をっ」

「ヤダ、朝から言っていい言葉じゃないけど、言おうか?」


ないないないっ!

言葉にならないまま勢いよく頭を振ると、美咲はつまらないと口にした。

というか、私もよく覚えてない部分はあるけど。

それでもそれはないと、身体的にわかる……気がする。

何にせよ、私はまたまた桜庭さんにお礼を言わなければならないわけで。

ついでに用を足すと言う美咲と別れ、ひとり廊下へと出れば──


「おはよう、蓮井」


なんということでしょう。

心の準備もなしに、桜庭さんに会ってしまった。


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