溺愛オフィス


クールな瞳は閉じられていて、普段のキリッとした顔からは想像もできなかったあどけない寝顔。

思わず笑みが零れてしまう。

それで気が緩んでしまったのか……


「あ……」


手にしていたスケジュール用紙を床に落としてしまった。

拾おうとしゃがめば、すぐ目の前に、先ほど力を無くして滑り落ちたばかりの桜庭さんの手。


桜庭さんは以前、この手で私を助けてくれた。

資料室で落下した時も、マンホールにハマッてしまった時も。


この手が、私を支えてくれた。


そう思うと、彼の手がとても優しいものに見えて。


なぜだろう。

男の人に触れるのは苦手なのに……


今、桜庭さんの手に



触れてみたいと思うなんて。




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