ハートブレイカー
「顔も似てるし、俺同様、蕎麦アレルギーがある。直哉の“哉”は 俺と同じ字。まったく・・・」

そう海堂さんはつぶやくと、ソファにもたれて顔を上げ、右手で両目をもんだ。

彼から疲れが滲み出ているような気がした。
やっぱり・・・本当は迷惑だよね。
いきなり息子がいるって事実をつきつけられて。

「・・・ごめんなさ・・・」
「なぜ謝る。俺にずっと黙っていたことか。おまえがいきなり逃げ出したことか」
「そっ、それは・・・」

彼は目をもみながら、フーッと深いため息をついた。

「言いたいことは山ほどあるが、それは後でもいい。だがこれだけは覚えておけ。俺は息子の存在を知った以上、放置することは絶対しない。直哉に関わることは、俺も関わる」
「う、は・・い」

涙が出そうになっているのは、嬉しいからか。
それとも・・・直哉が私だけの存在ではなくなるという恐れからか。
絶対、後者。

だって・・・うつむく私に、彼はどんどん追いうちをかけてくるから。

< 134 / 223 >

この作品をシェア

pagetop