ハートブレイカー
1ヵ月半の間にこの部屋へ足を踏み入れたのは・・・今回で4度目か。
過去3度はいずれも掃除で。

彼はドアを閉めると、射抜くように私を見た。

「どうした」
「え」
「急に・・・今にも泣きそうな顔になった。何があった。脅しの電話でも来たのか」
「ちがっ、違います!」

ていうか私、そんなに分かりやすいですか・・・。
うつむいた私に、彼が呼びかける。

「愛美(まなみ)。俺を見ろ。言いたいことがあるなら言え。いつも勝手に自己完結して逃げるのはおまえの悪いクセだ。しかもおまえの場合、 それがマイナスに働くから・・・」
「分析は結構です」

挑むような目つきで彼を睨む。

「それでこそ俺のマナだ」
「だから・・・。あの、海堂さんにはその・・・今おつき合いしている方がいらっしゃるんですか」
「・・・なぜそんなことを聞く」

あ。腕組んで指を叩いてる。 苛立ちのサインだ。
なぜか安堵した私は、心を落ち着けて彼を真正面から見据えた。


< 182 / 223 >

この作品をシェア

pagetop