ハートブレイカー
目の前に影ができた。
と思ったら、腕をつかまれて。
彼に抱きしめられた。

「まったく・・・どこまでおまえはアホなんだ」
「・・・あなたに言われたくな・・・」

「今日は俺の誕生日だ」

・・・え。
思わず泣き止んだ私は、顔を見上げて彼に「おめでとう」と言って いた。

「言ってくれればよかったのに。プレゼントとかケーキとか、全然用意してない・・・」
「ケーキはいらない。それに、プレゼントはもうもらった」
「・・・え」
「自分が生まれてきたことが、こんなに嬉しいと思ったことはない。 それに今日ほど誕生日が特別だと感じたこともない」
「ど、して?」

「直哉とおまえから“おめでとう”と祝ってもらえたから」

不覚にも、私は唇をワナワナ震わせて、また泣き出してしまった。

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