ハートブレイカー
ナイフとフォークをそっと置いた私を、彼がじっと見ているのは分かる。
でも・・・ごめんなさい。

おいしいホットケーキだけど、食欲なくなりました。

「私は行かないほうがいいと思う」
「おまえは行く。決定事項だ」

う。直哉がいる前で言い合いはしたくない。

彼の冷静すぎるほどのクールな口調と、私の落ち込む様子が合わさり、周囲に重たい空気が漂い始めた。
直哉にもそれが分かったのか、何となく不安な顔で私たちを見てい る。
直哉がいる前で、あえてこの話題を切り出してくるなんて・・・。

「この前のような思いは二度とさせない」

直哉に聞こえないようにという配慮なのか、彼が私の耳元で囁いた。
ビクッとした私をなだめるように、背中にそっと大きな手を当てる。

「約束する。だから一緒に来てくれ」
「・・・わ、かりました」

「ありがとう」

てっきりまた「Good girl」みたいなこと言われると思ったのに。
誠実な彼の言葉の響きに、嘘はないと確信した。
彼がいるなら、思いきって飛び込んでも大丈夫。

大丈夫。

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