ハートブレイカー
私は顔を上げると、先生の目をしっかりと見た。

「知りません。でも私、生みます」
「そう・・・。倫理的に私は賛成だけど、現実的にはひとりで育てるって大変なことですよ。その覚悟はできていますか?」
「できていません。でも、そのうちできるでしょう。そうするしかないんだったら」

捉えようによっては、投げやりにも聞こえる言い方だったと思う。
でもそのときの私には、生むと決めた以上、それが本音の本心そのままだった。

先生は、それ以上言うことをやめた。
私は、適度なところで諦めてくれたことに感謝した。

「次の検診は2週間後になります。それまでに母子手帳を貰ってき てください」
「あ・・・分かりました」

母子手帳という言葉で、また妊娠が現実味を帯びた。
母子、か。 まさに「私たち」のこれからだ。

私はいろんな思いを背負いながら、病院を後にした。

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