ハートブレイカー
私は知ってる限り、海堂さんのことを直哉に話した。
直哉を妊娠したことは、海堂さんにとって望まない結果だったかもしれない。
それでも私は、直哉に対して父親(かいどうさん)のことを悪く言うことはできなかった。

いや、したくなかった。

直哉の夢を壊したくない、というのもある。
でも私自身、父親を失望させ続けた子として育てられたせいか、直哉にまでそういう思いをさせたくなかった。

それに、さっきのバトルで、少なくとも海堂さんは、直哉に対して責任というか、関わる意志を見せてくれた。
私の本心はいやだけど、無視したり引かれたり、拒否されるより、かなり良い反応だったと、今になっては思う。
この分だと、万が一私がこの子を育てられない状況に陥ったり、死んでしまっても・・・海堂さんが直哉を育ててくれるという確信は持てた。

でも、実際そういう状況になったとき、彼は直哉を見捨てないだろうか。

一瞬思い浮かんだ悪い考えを、即座に否定する。
ううん、彼はそういう人じゃない。
有言実行タイプというか、やるといったらやる人・・・あ。

だからあの人絶対、「また来る」よね・・・。


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