光の少女Ⅱ【救出編】

第4章 予兆

1
宝珠があるという谷に着いたのは、刹那の力を使った為、すぐのことだった。


「それで宝珠は何処にあるんだ?」


谷以外何もない場所を見回し、昴が聞く。


「この谷底さ。あそこから下りられる」


そう言って風夜が指した先には、険しい道があった。


「よし、じゃあ妨害が入らないうちに行くか」

「そうだな」


刹那と千歳が歩きだす。花音もそれに続こうとして、王が何やら難しい表情をしているのに気付いた。


「あの、どうかしたんですか?」

「・・・いや、何でもないよ」


答えて歩き出した王に、残された花音は首を傾げる。

何かが引っ掛かった。

谷底に着くと、そこには小さな祠のようなものがあった。


「あった!」


その中に宝珠があるのだろうと思い、その扉を開ける。

中に宝珠があるのを見つけ、花音は声を上げた。


「っ!」


同じように祠を覗いていた風夜が宝珠を取り出そうと手を伸ばす。

その時、宝珠の周りに電流が走り、風夜を拒絶したように見えた。

何かの間違いなのかとも思ったが、風夜は引っ込めた手を押さえている。

その彼の手には、焼かれたような酷い火傷が出来ていた。


(どういうこと?今までこんなことなかったのに)


思いながら風夜の代わりに宝珠に手を伸ばす。

風夜を拒絶したようにも見えた宝珠は、花音の手を傷つけることなく、あっさりと手に入った。
< 99 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop