あの頃のキミは

「懐かしいよね、この公園」

はじめに口を開いてくれたのは凪くんだった。

「うん…」

ちらりと凪くんの横顔を盗み見るとハンカチに収まってない部分が赤くなっているのが見えた。

「っ…ごめんなさい、凪くん!その頬の事も…凪くんの話を聞かなかった事も…記憶を無くしてた事も…全部…」

「…顔上げて、絵麻。絵麻が謝らなきゃいけないのは、この頬のことくらいだね」

バレー部のビンタ、マジでえげつないってクシャっと笑う。

「…星野さんは、ちょっと許せないけど…記憶の事はさ、絵麻のせいじゃないよ。その時の絵麻を守るためには、しょうがない出来事だったんだと思うよ」

そう言って優しく微笑んだ。

「でも…私、思い出したと思ってたら…それはなぎちゃんの方の記憶で…凪くんの事忘れてしまってたし…」

「はじめはさ、確かにちょっとショックだったんだ…でもきっとそれは、俺の名前が"凪"から"凪早"に変わったからだと思う」

「…変わった?」

「うん。漢字は違うけど、渚と音は一緒でしょ?居場所は違うかもしれないけど…いつでも一緒にいる気がして、改名手続きしてもらったんだ。
でも、さすがに嬉しかったな。絵麻に凪くんって呼んでもらえた時は。小さい時の事思い出したよ」

また切なそうに笑う凪くんを見て、心がギュッとなる。
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