だれにもみつからないところへ。
これまでのこと。

つきあうまえ。 1

私には、彼氏がいた。
同い年の、男の子。
ひーくんと、呼んでいた。



3ヶ月目に入ったばかりの頃。

「……生理がこない」

口に出すと、寒気までした。
思い当たる節があったからだ。

ひーくんとは付き合って1ヶ月経つか経たないか位でセックスをしていた。

最初こそ避妊をしていてくれたが、すぐに生でしたいと要求され、断れなかった。
それでも、中に出してしまうことがなければ大丈夫だろうと、自分を宥めていた矢先。
恐れていた事態が発生した。


"誤って"中に出されてしまったのだ。
ひーくんは急いでそれを掻き出して、ティッシュで拭いとり、謝ってくれていたが、私の耳には届かなかった。

絶望と後悔。
それだけが頭を渦巻いていた。
どうして生ですることを許していたのか、そもそもセックスをすることを許していたのか。
そんなことを考えていた。


その日から何となく、少しずつ、でも、確実に、ひーくんとは距離を置いた。
会って話したいとは思えなかった。
もともとお互い忙しく、会えるのは週に一度。
学生だった私は、年度末に大きな試験を控えていたため、会わないようにするのは簡単だった。



そしてこの日。
30日を超えた所で何となく変な感じはしていた。
いつものようにお腹の張った感じがなかったからだ。

甦る不安の数々。
私は昔、同じような経験で、辛い思いをしていた。
その時は、妊娠せずにすんだけれども、今回は。


35日目。

暫く会っていなかったひーくんから電話がきた。
私は生理が来ないことを恐る恐る伝えた。
すると、彼はこういった。
「何で早く言ってくれないんだ!?」
「…………」

言いたくなかった、というのが答えではあった。
こう言われることがわかっていたからだ。
そして、次に言われることも。

「俺、責任取るよ」
「……」


終わったな、と思った。
普通の女の子なら歓喜している場面かもしれない。
けれど私は違った。

春には就職が控えていた。
3月には試験がある。
もし妊娠していたらーー
その全てが台無しになってしまうのだ。

だから、本来なら、もっと前に気が付かなければならなかったのだけれど……。



その夜は色々考えた。
子供が出来ていたら、降ろさなければいけない。
お金のこと、人殺しになってしまうこと。
息が詰まりそうだった。
自分を、心の底から呪った。


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