金魚の恋
夜も更けて、窓の外は 漆黒の闇になっていた。
どうやら、月も出ていない。
明日は、雨になるのかもしれない。
今思うと、tomkoが呼び寄せたのかもしれない。

「もう、やすもうか」
「そうだね。明日は、町を案内するよ。
杜の都ほどには 見る所はないけど、歌謡曲になった繁華街にでも 行こうよ」
が、ガーン! 布団が、一枚だけしか、ない。

tomkoは、
「いいょ、一緒でも…」と、言う。
その言葉、嬉しくもあり、恐くもあり。
背中を向けて、狸寝入りの僕。まるで勇気のない僕。
“情けない”
そう思いつつも、体が強張って まるで金縛りにあったみたいだ。

「ねえね抱いて」
暗闇の中で、響く声。
言わせちゃいけない 言葉だったのに。
男なら、女性の口から発せさせては いけない言葉なのに。

無言の僕の背中に、tomkoの胸の膨らみが。
初体験の二人、結局 うまくいかなかった。
いや、僕が 情けない。
キスをして…胸を触って…もぞもぞとしている内に……


翌朝目覚めた時、tomkoの姿は、なかった。
テーブルの上に残されていた、走り書き。

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞
二十四歳までは、結婚しないで!
私より先に、結婚しないで!!

たゞ、それだけ……
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