卯月の恋
「すみれちゃん、今度ご飯行こうよ」


秦野さんが早く帰れと言わんばかりにしっしっ、と追い払ってるのを完全に無視して、川崎さんはにこにこしながら私に話しかける。


一言で言うと、川崎さんはチャラい。
手足がすらりと長く、学生の頃はよくモデルにスカウトされたらしい。
人当たりが柔らかくて、私みたいな新人にも、こうして社交辞令で誘ってくれるんだけど、当然女性社員には人気があるので、正直他の社員の目がこわい。


ただ唯一、秦野さんは、川崎さんが苦手らしい。


「ああいうへらへらーっとした男、大嫌い」

秦野さんはそう言って、川崎さんに冷たい。


「えっと…」

なんて返せばいいか、わからなくて言葉に詰まっていると、デスクの電話がなった。


「宮内、内線とって」

ちょうどよかった、と思いながら、川崎さんに会釈をして電話に出る。

隣で秦野さんがにやりと笑いながら、川崎さんにバイバーイ、と手を振っていた。


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