卯月の恋
ご飯を食べ終えると、二人で並んで座って玲音はコーヒーを、私はホットココアを飲んだ。

玲音は相変わらずあんまり話さない。


「こんな時間にコーヒー飲んで大丈夫なんですか?」

ブラックで熱いコーヒーを飲んでいる玲音に聞いてみる。


「大丈夫って何が?」

玲音は不思議そうな顔をする。


「寝れますか?」


私が尋ねると、玲音は納得したようにあぁ、と呟いた。


「休みの日も寝ないから」


「寝ないって…どうしてですか?」


「寝ない、っていうか、いつも起きてる時間だから寝れない」



今日も玲音の顔色はあまり良くない。
夜起きて、昼に寝てるんだもん。
体にいいわけないよね。

玲音の端正な横顔を見つめていると、部屋のすみからだん、だんと音がした。


「なんの音?」


玲音が不思議そうな声を出す。


「キリコです」


玲音にそう答えて、私はキリコのケージに近づく。

ケージの入り口を開けると、キリコがぴょんと飛び出して、私のひざに乗った。

「うさぎは犬みたいに吠えたりしないかわりに、こうして足を踏み鳴らして抗議するんです」


「抗議?」


「たぶん、ヤキモチです」


きっと、私が玲音のことばっかり見てるからだ。



「うさぎもヤキモチ妬くんだ」



玲音はおかしそうにそう言って、キリコをのぞきこんだ。

玲音の茶色い頭がすぐ近くに来て、ふわっといい香りがした。

< 31 / 105 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop