卯月の恋
「…へくちっ」

ぶるる、と体が震えてくしゃみが出た。

玲音は、なに今の?もしかしてくしゃみ?とおかしそうに聞きながら、自分の部屋の鍵を開けて、

「入れば?風邪ひくし」

と、私のバッグを拾って言った。



…え?
入れば?って…。


「…へくちっ」


玲音は今度は、ぷっと吹き出して、

「早く」

と催促する。



「でも…びしょぬれだし。それに、玲音は今から仕事なのに悪いです」


「いいから」


もごもご言う私にいらいらしてきたのか、玲音はぐいっと私の腕を引っ張るとバタンとドアをしめた。

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