イケメン無愛想S男子と契約を


次の日、少し浮いた足取りは
たぶん昨日の誰も見たことがないであろう彼の笑顔を見れたから。




「おはよう。」




あ。


おはようと次々に挨拶をしながら
私は睨むようにして3人を見た。


ほら。


みんないつもと同じようにグループを作ってる。



1人の子なんていない

やっぱ、大事だよ。

そういう見かけは。


曽良くんのような
1人が独りになれる立場じゃないんだから私は。




「ねぇ、これはなに?」



黒髪のロングの子がクールに髪をかきあげながら
スマホの画面を私に見せる。




「へぇ。なにそれ。キモいんだけどぉ。」



私に顔をぐっと近づけた美里は
ニヤリと口角を上げた。





「デートだよ?」



いたって普通の会話。

そうじゃない?
コイバナって結構盛り上がるじゃん。




周りを気にしながら
私は画面を再度見た。





彼の握ったスプーンが私の口の中にすっぽりとはまったその瞬間の写真。




おそらくイチゴパフェを食べていたあの時だろう。



誰情報なのか、みんながよく利用するSNSで投稿されているその写真は
かなり拡散されていて





「あんたさ、曽良くんと付き合ってんの?本気で?」





今までのように周囲を伺いながらわたしに攻めてきた傍観女子に





「写真が物語ってんじゃん」


と、初めて

言い訳をしてみる。



イラつきなのか悔しさなのか
顔を歪ませた彼女に。


美里は間を割って私の腕をつかんだ。




「曽良くんはみんなのもんだよ。自惚れんな」




そう言って残りの2人を残して私を連れ去るように屋上に連れて行く。




抵抗なんてしない

なんでって、美里が私に口喧嘩も体力を伴う喧嘩も何もかも勝てる気なんてしないから。



もし親の権力を使うだなんてまた言いだしてもできやしないに決まってる。



前に言われたあの後、結局ふつうに会社に行く親を見て

ほらねと胸をなでおろした。



美里は、悪いことなんて本当は嫌いだから。




嫌なこと全部の矛先が私だからこそ、

私を虐めれるのかもしれない。

私じゃなかったら彼女は何も手を出さない。




私だって知ってるから。



美里の本当の美里を。









「黙ってついてきたのね。」




そう呟く美里に

小さくうなづいた。



屋上の真ん中まで連れられ、手を離された。



周りに壁なんてない。
前みたいに首を締め上げられても
なんとかなりそう。



少し彼女と距離を取る。





「曽良くんのこと、諦めて。」








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